本日、投資先Wise (旧トランスファーワイズ) が直接上場の手法によりロンドン証券取引所へ上場しました。
産業や世界を変える可能性を持った特別な会社に出会った時、そういった特別な会社は、普遍的に意義深く、しかも一言で表現できる何かを目指し体現している、と感じることがあります。
例えば2020年に上場し、昨今時価総額1兆円超の企業にまで成長したWiL投資先の米国ソフトウェア企業Asanaの場合、彼らが目指すその意義深い「何か」は、「アラインメント」と言えるかもしれません。この目まぐるしく変化する世界の中で、人々が同じ方向を向き協力できるような「アラインメント」を実現するための製品を作り、またそれを体現するチームを作って来た歴史がAsanaにはあります。
今般上場したWiseにとってその特別な「何か」は、隠し事の無い正直な存在であること、つまり「透明性(トランスペアレンシー)」であると感じます。そしてその透明な姿勢や製品が多くの人の心を動かし、産業や世界を変えるインパクトを持った存在にWiseを至らしめた、と感じます。
伝統的な国際送金のサービスには、金融機関がひっそりと悪い為替レートを適用して実質的に追加の手数料を徴収するといった、不透明性がはびこってきました。こういった隠れた手数料の存在から、伝統的な金融機関を通じて国際送金取引を行う消費者の実に4%の人しか、払った手数料がいくらであったか正しく答えることができない、という調査が存在します(1)。
更に国際送金のサービスは伝統的に、高い手数料(3-7%が手数料で徴収される)、遅い着金(数日から場合により数週間着金に要する)、悪い取引体験(取引執行自体のためにしばしば長く待たされる)に特徴づけられる、消費者満足度の低いサービスでした。
国際送金の悪い体験に強い不満を持ったWiseの創業者であるクリスト、ターヴェット、そしてWiseのメンバー達は、安く(平均0.7%の手数料)、早く(38%の取引が即時着金し、83%が24時間以内に着金する)、便利で(数回クリックするだけで送金が完了)、圧倒的に透明な(明示された以外の手数料は徴収しない)、完全に新しい送金サービスを作り上げました。
消費者や企業がWiseとその他の送金手段を透明に比較すると、多くの人々が同じ結論に至ってきました。Wiseを使うべき、という結論です。この透明な比較を促進するため、製品デザインやマーケティングをはじめとしたWiseのビジネスのあらゆる側面には、透明性を促進する仕組みが組み込まれています。Wiseの事業は、透明性の上に成り立っている事業とも言えるのです。
フェアで透明性が高く、顧客から支持されるサービスを提供した結果、Wiseは高成長、高収益で持続可能性の高い事業を作り上げました。年間の国際送金額は540億ポンド(約8.3兆円)に達し、平均54%で過去2年間成長している4.2億ポンド(約650億円)の売上高と、26%の調整後EBITDAマージンを誇るビジネスです。加えて、この事業を運営するために作り上げた送金のインフラを活用して、新しいビジネスを展開する道がWiseには開けています。年間18兆ポンド(約2,800兆円)もの資金が動く巨大な国際送金市場で、Wiseは長期的に事業を構築していくことができます。
「隠すことなんて、何もない(Nothing to Hide) 。」Wiseがかつてロンドンで展開したマーケティング・キャンペーンのメッセージです。透明で全てを明らかにする姿勢は、強さの現れと言えます。透明に全てを包み隠さず開示するためには、経過を説明し結果に責任を持つ姿勢、勇気、自信、そして優れた仕事へのコミットメントの全てが必要だからです。
今日の世界で、経過・結果への責任、勇気、自信、優秀な成果へのコミットメントなどは、非常に稀にしか見ることができません。だからこそ、Wiseの徹底的なまでの透明性への注力は、消費者、企業、規制当局、従業員など数多くの人々の心を動かし、インスパイヤする存在として輝き、際立つのです。
私達は、創業者のクリストやターヴェットと日本を旅し、日本の金融機関や規制当局との対話や、Wiseチームと一緒に事業パートナーシップの検討や市場開拓の場面にご一緒する経験を経て、Wiseの理念と事業作りのアプローチに深く感銘を受けてきました。Wiseには、日本を含めた世界の市場で大きな事業可能性が存在すると、我々は考えます。
クリスト、ターヴェット、マットをはじめとしたWiseチームの皆様に、本日の上場という大きな節目に際し、心からお祝いの意を述べたいと思います。世界がより透明でフェアな場所になること、またそれを実現する原動力たるWiseのさらなる活躍を楽しみにしています。