製造業のバリューチェーンをみわたすとロボット化や自動化による「生産」は様々な進化を遂げてきましたが、「調達」は1世紀以上もの間、特にイノベーションもなく放置されてきました。
WiLが2018年に初めてCADDiに投資したのは、この最もアナログな製造業の調達をデジタルに変革するという、彼らのミッションを信じたからです。折からのコロナ、そしてパンデミックは製造業を未曾有の危機に陥れましたが、同時に不透明で非効率な調達サプライチェーンを戦略的に見直す契機となりました。そんな製造業にとって、CADDiのソリューションはパンデミックの焼け野原に降り立った救世主のように強く求められ、急成長を遂げています。
本日、CADDiはシリーズBの約80億円の資金調達を発表しましたが、WiLは本ラウンドの共同リード投資家を務めました。共同リード投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズに加え、既存投資家としてDCMベンチャーズ、グローバル・ブレイン、そして海外投資家を中心に新規投資家6社が参加しました。本ラウンドの投資は、私たちのインダストリー4.0、そして日本の基幹産業である製造業の復活に向けた強いコミットメントを示しています。
「調達」のペインポイント
多品種少量な特注(カスタム)品は製品種類が非常に多いため、調達担当者は大量の部品をあらゆる先から調達しなくてはなりません。この多品種少量品の市場は日本の調達市場120兆円のうち40兆円を占め、なかでも金属加工品だけで5兆円という巨大市場です。
日本に約4万社存在する金属加工会社は、8割が従業員10人以下という零細企業の集合体です。その生産キャパシティはすぐに埋まってしまい、得意分野やコスト構造もバラバラです。製造業の調達担当者は大量の部品調達のために、一日数百回も電話をしてサプライヤーを探し求めるという行為が常態化していました。
一方の加工会社にとっても、毎回の受注には必ず相見積もりが伴います。毎回異なる図面を解析して価格提示しても、失注リスクを抱えたままです。季節性など繁閑の変動も大きく、事業や資金繰りの見通しが立てづらいという課題を抱えていました。
受発注におけるイノベーション
CADDiはこれら零細加工会社のスキルやコスト構造など集約した独自のデータベースと、発注者の発注要件に応じた最適マッチングのアルゴリズムを構築しました。CADDiとの取引によって、発注者は大量のカスタム部品の調達を、最も有利な価格で、一瞬で完了させることができます。加工会社にとっては、CADDiからの注文は確定注文であるため、見積もりを提示した後の失注リスクがありません。
CADDiがもたらした革命、それは、これまでブラックボックスだった零細加工会社に関する情報を可視化し整理することで、調達における非効率と無駄を解消した点にあります。SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)に経験あるチームゆえに構築できたデータベース、そして大量の受発注取引を処理する毎に磨かれる最適マッチングのアルゴリズムこそが、CADDiが今後も継続して築くであろう競争優位であり、他の追随を許さない圧倒的な参入障壁なのです。
製造業におけるDXを推進
今後の成長は3つの軸でイメージできます。まず、業界や製品の横断的な拡大によるスケール・メリットの獲得です。規模拡大は需要側と供給側の双方にネットワーク効果をもたらします。次にSaaS展開です。CADDiがローンチした図面管理ソフトウェアは紙中心の図面データをクラウドに一括管理し、受発注に至るシームレスな体験を提供します。そして、東南アジアを中心とするグローバル展開です。顧客の調達ニーズをグローバルに支援することで、一層大きな市場機会を獲得できます。
これまでも、そしてこれからも、日本の基幹産業であり続ける製造業。CADDiは業界全体のDXを推し進めるプラットフォームであり、バリューチェーンを変革する革命児です。私たちWiLは、CADDiの次なる成長を支援でき、日本の産業変革をCADDiのチームと共に推し進められることを、心から楽しみにしています。